慢性の腰痛は、なぜ治りにくいのか

よく、クライアントさんとお話ししてると、
こんな会話になることがあります。

先生、うちの実家の母がもう20年以上前からひどい腰痛で悩んでるんです。

20年は長いですね。
そもそも、なぜそんなに長い期間治らないのでしょうか。
そこから考えていきましょう。

腰痛を治すのにどんな方法があるのか

薬、サプリメント、病院、マッサージ、など
いろんな方法がありますので、うまく取捨選択する必要があります。

わかりやすい考え方として、
アクティブケアパッシブケアという考え方があります。

 

アクティブケア

アクティブケアとは、自分で治すという意味です。
ストレッチや、運動、セルフマッサージ、温活、漢方なんていうのもありますね。

パッシブケア

パッシブケアとは誰かに治してもらうということです。
病院や民間療法(カイロ、鍼など)

まずは、
アクティブケアで治していくのか、
パッシブケアで治していくのかを考える必要があります。

この仕事をして十五年以上になりますが、
アクティブケアはどちらかというと予防に強い印象があります。

軽傷の腰痛の場合や、
腰痛の再発防止などには非常に効果が高いです。

[alert title=”注意”]ネット社会で様々なセルフケアの方法が紹介されていますがご自身の体の状態がわからない段階で、いろんなケアを試すことは結果として悪化につながることが多いので注意が必要です[/alert]

一方のパッシブケアは、
専門家に見てもらうわけですから、
比較的症状の重い腰痛などに適していると言えます。

冒頭のご相談のように、二十年以上前からの腰痛であれば、
パッシブケアを選ぶのがベターだと思います。

 

どんな治療をどこでうけるか

ここでも迷いますね。
迷わないためには、痛みの種類を判断すればよいと思います。

痛みには、

・急性痛
・慢性痛

という2種類があります。

急性痛とは

怪我のこと。
明らかに組織が損傷するぐらい強い外部からの圧力がかかることによって起こる怪我です。
骨折、打撲などですね。これはわかりやすいです。
この場合は、痛みは強いですが、通常4週間程度で痛みはほとんど感じなくなります。
この場合は特に迷うことなく病院に行く方が多いと思います。

慢性痛とは

はっきりとした原因がなく、4週間以上たっても、
症状が引かないケースです。

朝起きて何かを歯磨きをしようとしたら激痛が走ったという場合は、
いつもは問題なくできる動作で痛みが発生したと考えるのでこれは急性痛ではなく慢性痛の可能性が高いです

まずは、整形外科にいきましょう

まずは、病院にいきましょう。
なぜ病院にいく必要があるか。
それは、別の病気からくる腰痛ではないかをみる必要があるからです。

当院でも、以前に腰痛で来院された方が、
悪性腫瘍による腰痛だったことが何例かありました。

腰痛だからと侮らずに、病院で検査をうけていれば、
別の病気であっても、早期発見につながります。

病院の検査でわかること

慢性の腰痛で、病院に行った場合、
主に、レントゲンやMRIなど画像検査を受けることになります。
画像検査でわかるのは骨などの組織の変形です。
しかし、ここで、
慢性の関節痛を考える上で最大のポイントがあります。

関節の変形と痛み

画像検査で、変形の程度がわかります。
しかし、変形と痛みが関連しているかどうかを調べる方法は、
現代の医学ではまだ確立されていません。

画像検査では、痛みと変形の関連まではわからないのです。

そのため、軟骨が減っているとか、
少しヘルニアがでているというような場合も、
痛みの原因かどうかはわからないということになります。

冒頭の、二十年以上腰痛で苦しんでおられるお母さんは、
当然病院には、何箇所もいっているし、何度も検査されています。

行くたびに、坐骨神経痛だといわれたり、
脊柱管狭窄症だといわれたり、そのときによって違うそうです。

その検査によって選択された痛み止めや、
リハビリをおこなっても改善しない。

ということは、
今現在ある検査法では、
うまく見つけることができない要因があると考えるのが自然ではないでしょうか。

何が痛むのか

急性痛の場合はシンプルです。
怪我なので組織が損傷して痛む。
慢性痛の場合は、諸説あっていまだに結論はでていません

とはいえ、結論が出ていなくても
実際に治さないとどうにもなりません。

著名な比較解剖学者の三木成夫先生は、
著書の中で、こう記されています。

われわれはこの西洋医学の盲点とも思われる内なる痛みを、
実は「筋肉」に由来するものと考える

したがって、人間のからだから一切の筋肉を取り除けば、
本来の医の世界はあるいは生まれなかったであろうと考える。

筋肉の強い収縮が耐えがたい痛みをもたらすことは、
骨格筋ではあの“こむら返り“を見ればよい。
これに対して胃けいれん・腸閉塞・結石痛、そして陣痛などはその場の内臓筋の異常収縮に、
またあの拍動性の頭痛・歯痛・化膿痛などはその領域の筋性細動脈すなわち血管筋の強い収縮に、
それぞれ由来するのであろう。

われわれが冬の朝、冷水に手を入れた時、あるいは間違って、熱い風呂に片足をつっ込んだ時、その皮膚に生ずる瞬間の冷温覚から少し遅れて、あの手足の芯を締め上げるように襲ってくる激痛は、とりもなおさず付近一帯の筋性動脈がいっせいに反射を起こしたものと考える。

血管系の枝分かれに乗って、皮膚より内側の津々浦々に分布するその筋肉組織は、体内に張り巡らされた、もっと精密かつ高感度の“痛覚の発生装置”ということになろう

「痛みの本態」 三木成夫

つまり、
痛みは筋肉の収縮によるものだとこの一文の中でいわれています。

確かに、
画像検査では筋肉の収縮はみえない。

例えば、股関節の痛み。
痛みは股関節の変形だと言われることが多いですが、
痛みを訴える人は、
1ヶ月前からとか、1週間前から痛い。と言われるケースがあります。

では、1ヶ月前、痛みがでる少し前には変形はなかったのか。
といえば、そんなに急速な変形したとは考えにくい

そう考えると、
痛みが出る前は、変形していたが痛くなかった
と考えるのが自然だと思います。

ここまででわかること

・慢性痛の原因は現代の医学でもはっきりわかっていない
・対処法が確立していない
・変形と痛みはイコールではない
・痛みは筋肉の収縮によっておこることが多い

慢性の痛みでお悩みの多くの人は、
腰の骨が薄い、軟骨がすり減っている
など、骨の変形が原因と考えて、半ば諦めている方が多いのが現実です。

しかし、
慢性痛の原因は未だ不明です。
仮に、変形ではなく、筋肉の異常な収縮が原因と仮定すれば、
長年の腰痛が改善する可能性もみえてくるのではないでしょうか。